◆観光の日
2月13日金曜日は公演も移動もない、丸一日お休みの日。
そこで大使館のご配慮により、観光に連れて行っていただきました。
アテンド役は専門調査員のYさん(女性)と、書記官のKさん。
金曜日はイスラム圏では日本の日曜日にあたる休日で、大使館も現地のスタイルに迎合して公務はお休み日。
つまりこの二人は休日を返上して我々に付き合ってくれたんですね。
ありがたいことです。
実は書記官のkさんは、私のインターネット友達で、もう数年前からの知り合いだったりするのです。
でも今回シリアで会うことになったのはまったくの偶然。
私のシリア公演が決まった後に、彼がシリアに赴任してることを思い出し、大使館関係の仕事だからもしかしたら会えるかな? てな具合で思ってたらモロでした(笑
彼も、本来なら公演関係には携わらない身なのだけど、事情を知った大使が配慮してくれたそうです。
そんな訳で、今回のアテンド役も自ら買って出てくれたという次第。
お互いまさかシリアの地で会おうとはね・・・
さて、シリアの観光地といえば、最も有名なのがパルミラの遺跡(今回行くまで知らなかったけど)。
他にクラック・ド・シュバリエという十字軍時代に作られた城の遺跡などがあります。
ここは天空の城ラピュタのモデルになったことで有名(これも行って知った)。
どっちにする? と聞かれたので、皆で議論した結果パルミラに決定。
クラック・ド・シュバリエも結構迷ったんですが、やっぱり初めての国で一番の見所は押さえとかないと。
そんな訳でいざパルミラへ出発。
◆バグダットカフェ
ダマスカスからパルミラへは車で約3時間ほど。
市街から30分も走ると、車窓から見えるのは果てしない荒野に変わり、最初は感動して見てたもののすぐに麻痺してしまい、気が付けば夢の中。
1時間半ほど走ったところでトイレ休憩。
ドライブインかと思いきや、砂漠にポツンとあるジプシーの小屋です。
名前は「バグダットカフェ」。
観たことないけど、同名の映画がありますよね。
どうやらここから東に150km行くとイラクの首都バグダットなんだそうで、すぐ近くにその分岐路があるからこの名前らしい。
でも実はちゃんとしたドライブイン機能も備えており、こんな砂漠の真ん中なのに水洗トイレだったりします。
さらに観光用としてベドウィン(アラビア地方の放浪の民。いわゆるジプシー)が実際暮らしに使ってるというテントを見せてくれます。
有料ですがベドウィンの衣装も着せてくれる。
ここは寒風吹きすさぶような場所で、バスから降りるとかなり寒かったんですが、ベドウィンのテントの中は暖かいのです。ただ布が張ってあるだけなのに。
そして衣装をまとって外に出てみれば、やはりこれも防寒になってる。
頭に着けてるのは日差しから守るためですね。
うーん、生活の知恵ってのはすごいもんだ。
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テントの中で王様 |
奥の案山子と |
ここの主人が暮らしてる小屋の中はチャイ(インドや中東地方のお茶)が飲めます。
民族楽器なども置いてあり、自由に触ることができたり。
ここにゲストブックが置いてあったので見てみると、わりと日本人が立ち寄ってる様子。
せっかくだから私も書き込み。
何か気の利いたコメントを書こうと思ってたら出発時間になってしまったので、とりあえず「葛飾区亀有・鏡味仙一」とだけ記して逃げてきました。ふつうじゃん!
◆パルミラ遺跡
歴史は古く、紀元前1世紀頃から隊商都市として栄えたパルミラ。
ペルシャ帝国とローマ帝国の間にあり、交易の要所として大きくなっていったそうな。
いわゆるシルクロードの途中ポイントってことですね。
詳しいことはここで書かずとも、他に専門的なサイトもあるでしょうから割愛するとして(ホントに割愛なのか?という野暮なツッコミは禁止)、とにかく圧巻ですわ。
古代の神殿がドーンと姿を残してる様は感動ものです。
崩れた柱や壁などが転がってるのもリアルだし、そのひとつひとつが大きいので自分がちっちゃくなった感じがします。
東武ワールドスクエアではないのです。
2000年の時を経て今もなお堂々と建つ神殿跡。
シリア政府も少しずつ復元してるそうですが、なかなか手ごわいようです。20トンもある石塊を上に乗せる作業は現代でも大変なのに、昔の人は一体どうやって持ち上げていたんでしょうね。
パルミラ遺跡の発掘品の中でも、比較的保存状態の良いものを展示している遺跡博物館というのがあり、入り口には遺跡から見つかった大きなライオン像が置かれています。
太神楽のルーツは古代ギリシャが発祥とされており、ライオンダンスがシルクロードを伝って獅子舞に変化したと言われています。
シルクロードの中継地点として栄えたパルミラ。
とすると我々の獅子舞のご先祖様がこの像なのかも知れません。
足で鹿を押さえつけてるのが強いということを誇示してるのだそうな。
続いて高い身分の人々が入っていたという墓へ。
墓の鍵は博物館の館長さんが持ってるので、一緒に行ってもらいました。
墓は「死者の谷」と呼ばれる場所にあり、5階建てのビルほどの石室が点在。他にも地下タイプの墓もあり、一族により多種多様なものがあります。
館長さんを手中にしてる我々にあやかろうと、他の観光客も一緒に墓の中へ入ってきます。
そして次の墓へバスで移動すると、同じように車やバイクでぞろぞろと付いてくる(笑
なんだか妙な光景。
全員が見終わってから鍵を掛けるので、それまで我々は待ってなくてはならないのです。しかしそれも面倒くさくなってきたので、途中で館長さんを他の旅行者に預けて他へ行くことに。
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死者の谷 |
建物タイプの墓 |
続いて一帯を統治していた王族の城、その名も「アラブ城」へ。
小高い丘の上に建つアラブ城は、360度パノラマで景色が楽しめる絶景ポイントなのです。
と言っても全部砂漠なんですけどね。
遥か彼方に見えてる場所まで一体何キロぐらいなのか見当も付きません。
かなりの暴風でしたが、しばし景色に呆けてみました。
ちなみにここは夕方来るのが一番だそうで、砂漠に沈む夕日が綺麗らしい。
パルミラには観光用のラクダがいます。
地元の子供達の仕事らしく、観光客が近寄ると「乗ってー」と声を掛けてきます。それに応じると今度は大人が出てきて料金交渉。これがまたずいぶん吹っかけてくるんですわ。
ほんのちょっと乗るのに300sp(約600円)と言われたのを、調査員のYさんが頑張って150spまで下げてくれました。
それでもシリアの田舎町で150spって結構すごい額なんじゃないだろうか。いい儲けだなぁ。
黄昏時のパルミラは、その幻想的すぎる空間に心を吸われます。
2000年前から建ち続けるアラブ城がライトアップされ、近代技術と古(いにしえ)文化のコラボレーションが始まります。こうなるとただもう黙って見とれるだけでした。
これだけの思いが出来るならまた来る必要があるなぁ、などと考えてます。クラック・ドシュバリエも行ってないし。 |
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